
2023-03-09
こんばんは!創立17年、国際シェアハウスの草分け「カモンアップ」代表の永瀬泰子です。まだ日本にシェアハウスという文化が耳慣れなかった2006年。どのような道筋で起業に至ったのか、マイストーリーの第6回目です。
目次

東日本大震災の翌年2012年には、関西圏での第一号店として、大阪・緑橋の古い民家を大規模にリノベーションしたシェアハウスをオープンしました。 これを皮切りに、大阪・京都でも次々にハウスをオープンし、現在、大阪で9件、京都に3件のハウスがあり、それぞれ和気藹々とした雰囲気です。 最近では、大阪・淡路で元・町工場の建物をシェアハウスにリノベーションしました。スタッフや住人たちの手でDIYした部分も多く、作業を通して交流が生まれるのも良いところです。 異なる地域でシェアハウスを運営してみて感じるのは、関東と関西では、土地柄の違いのせいか、シェアハウスの雰囲気にも特徴があるということ。関東はどちらかというと、お互いにあまり干渉せずに自分たち各々の生活を大切にしているのに対し、関西は、地域の人々やシェアハウス同士の交流が比較的盛んな様子。面白い違いだなと思います。

私ごとですが、私は最近、結婚5年目になる夫との間に第一子を出産しました。 子育てをするようになってから、カモンアップの運営について
「これまでのようにはいかないな」
ということを痛感するようになりました。以前ならば、自分が先頭に立って死ぬ気になって働けばなんとかなる、と思っていましたが、子どもを抱えながらではそうはいきません。バイタリティと行動力で何事も乗り切ってきた私ですが
「やりたくてもできないこともある」
という不自由さをはじめて実感するようになりました。 これをきっかけに
「会社のしくみ自体を根本的に変えないといけない」
と考え、どうしたらいいか、スタッフとともに考えているところです。ワンマン社長一代で終わらせてしまうのではなく、社長がいなくてもスタッフそれぞれが自分らしく活躍できて、会社が末長く続いていくような、うまい仕組みを作れればと思っています。
私自身の体験から、今後「ファミリー向けのシェアハウス」の可能性にもチャレンジしていきたいなと思っています。 現在、私と夫と子どもの3人は、吉祥寺にあるシェアハウスに住んでいます。1階を私たち家族、2階をシェアメイトという間取りで、お互いのプライバシーにある程度配慮した部屋割りにしています。 はじめ、私の夫は
「家族だけで住みたい」
と言っていたのですが、私は絶対反対でした。親子3人だけで閉じて住むよりも、家族以外の人も子育てに関わってくれるような環境のほうがいいという確信があったからです。 とはいえ、いいことばかりではありません。例えば、夜泣きがうるさくて住人眠れないなど、さまざまなトラブルが起きる可能性も潜んでいます。 実際に一緒に暮らしてみてはじめてわかることは色々あると思います。そのため、数ヶ月間を試しに実際に一緒に住んでみて、感想をシェアした後、改めて正式に入居するかどうか考える「お試し期間」の導入も検討しています。

シェアハウスという暮らし方は今、新たなスタンダードになりつつあります。カモンアップを立ち上げた当時から10年間で爆発的にシェアハウスが増え、「シェアハウス」と検索しただけで、星の数ほどの物件がヒットする現状です。 価格帯もコンセプトもよりどりみどり。一時期は「アーティストシェアハウス」「鉄道シェアハウス」など、特定のコンセプトに基づいて住人募集を行うシェアハウスが注目を集めていたことがあります。 カモンアップでも、そうしたコンセプト・シェアハウスに関心を持ち、やってみようとしたこともあります。けれども実際は
「思ったよりもうまくいかない」
という感触でした。 それはなぜか。 おそらく、多くの入居者にとって、家で過ごす日常はまずは「落ち着けること」が一番で、対外的な活動や趣味はその次にくるものだから、ではないかと思っています。 長年、私自身がシェアハウスに住みつつ、また多くのシェアハウスを見てきて言えることは、
「その時住んでいる住人によってシェアハウスのカラーが決まってくる」
ということ。はじめからこちら側でコンセプトを決めるより、その時々に入居する人たちによって自然とカラーが決まってくるほうが面白いことが多いと感じます。

人がシェアハウスへの入居を選ぶ理由には、大きく2つがあるようです。 まずは、シェアすることで家賃が安くなるとか、エコで効率のよい生活ができるといった利便性の面。もう一つは、話し相手がいて心強いし楽しいから、といったコミュニケーション面。 今後は、それらに加えて「地域とのつながり」「コミュニティ」というキーワードも重要になるのではないかなと思っており、「コミュニティ・シェアハウス」というコンセプトを新たに打ち出していこうとしています。 その視点に立った上で、将来的に「シェアハウスの運営のフランチャイズ化」を目標に置いています。熱意のある人が中心になって場を温め、そういう場から場へのネットワークが全国に広がっていくことで、地域コミュニティの活性化につながったらいいなと思っています。 スタッフたちには、「カモンアップを踏み台にして羽ばたいていって」といつも話しています。日本の普通の企業では、「できるだけ長く働いてほしい」と言いますが、カモンアップでは真逆で、ここから巣立つことがゴールです。頑張ってくれているスタッフたちには是非、ここでの経験を生かして起業して、自分独自の視点と問題意識を社会に向けて形にしていってほしいなと思います。

インタビュアーから:
永瀬社長、お忙しい中、長いインタビューに真摯に答えてくださり、本当にありがとうございました!波乱万丈のドラマ、たいへん興味深く聞かせていただきました。今後、社会の変化に合わせてシェアハウスがどう進化していくのか、興味深く注目しています。
多様性を楽しみ、ゆったり暮らす。
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